ダイヤモンド/銅(Diamond–Copper)複合材料
九月19, 2025
🔹 背景と目的
ダイヤモンド:超高熱伝導率(>2000 W·m⁻¹·K⁻¹)、低熱膨張係数(CTE)、電気絶縁性。ただし金属との濡れ性が悪い。
銅:高い熱伝導率と電気伝導率、加工性が良好、低コスト。
複合化の目的:両者を組み合わせて、高熱伝導性・低熱膨張・良好な界面特性を兼ね備えた放熱材料を実現する。
🔹 課題
濡れ性の問題:ダイヤモンドは溶融銅とほとんど濡れ合わない。
界面熱抵抗:ダイヤモンド–銅界面における高いカピッツァ抵抗が有効熱伝導率を低下させる。
熱膨張の不整合:ダイヤモンド(CTE ≈ 1 ppm/K)と銅(CTE ≈ 17 ppm/K)の差により、応力やクラックが発生する。
🔹 製造プロセス
金属浸透法
ダイヤモンド粒子プリフォームに溶融銅を浸透。
表面改質により濡れ性を向上させる必要がある。
粉末冶金 / ホットプレス / 放電プラズマ焼結(SPS)
ダイヤモンド粒子と銅粉を混合し、加圧焼結で緻密化。
CVDコーティング
ダイヤモンド粒子表面に炭化物(TiC, Cr₃C₂, Mo₂C)や難融点金属(W, Mo, Nb, Ta)をコーティング。
濡れ性改善と界面抵抗の低減を実現。
🔹 界面工学の戦略
炭化物形成層(Ti, Cr, W, Mo):ダイヤモンドと強固に結合。
Cu合金化:CuにTi, Cr, Bを少量添加し、濡れ性を改善。
高エントロピー合金(HEA)コーティング:熱安定性・密着性を強化する新手法。
🔹 特性
熱伝導率:600–1000 W·m⁻¹·K⁻¹(ダイヤモンド体積分率と界面品質に依存)。
CTE調整:ダイヤモンド含有量を増やすことで、Si(≈ 3 ppm/K)、GaAs(≈ 6 ppm/K)に近い値に制御可能。
機械的強度:純銅より強化されるが、界面剥離が懸念点。
🔹 応用分野
パワーエレクトロニクス(GaN, SiCデバイス)の放熱基板
航空宇宙・人工衛星・軍用レーダーシステムの熱マネジメント
レーザーダイオードやマイクロ波デバイスのパッケージ材料